アフタヌーンティーは烏龍茶を煎れて、マンガを読もう―『異人茶跡 / 1 淡水1865』

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異人茶跡 / 1 淡水1865
作者:張李雅(チョウ・キア)
タイトル:異人茶跡 / 1 淡水1865
制作:台湾
ジャンル:歴史
ページ数:202ページ

あらすじ

1864年、清国(中国)の厦門(アモイ)で買弁(中国での欧米資本の商売を手助けする中国人商人)として活動していた李春生は太平天国の乱により、事業が打撃を受け立ち行かなくなってしまう。そんな折、知り合いの洋行(中国で活動する欧米の資本の会社)から台湾で茶商売をしようとしているジョン・トッドを紹介され、台湾に渡ることを決意する。トッドは欧米人ながら台湾の立地は茶商売に最適だと見抜き、評価の低かった台湾茶の販路を新天地アメリカに求めるのだが、彼らの前には様々な障害が待ち受けていた。

ジョン・トッド
ジョン・トッド
李春生
李春生

巻末の解説を読むと、ジョン・トッドと李春生は台湾茶の父と呼ばれる実在の人物らしく、ある程度史実に基づいた作品となっているようだ。

一般的にお茶にまつわる海外貿易と言うと、東インド会社の交易や、ボストン茶会事件(1773年)など紅茶にまつわるものが有名であるが、二人が注目したのは当時全く相手にされていなかった台湾の烏龍茶であり、新興市場であったアメリカに売り込むというのが面白い。

異人茶跡 / 1 淡水1865

作中の方々にお茶に関する用語が出てくるが、簡単な基礎知識としてお茶は茶葉を摘み取った後の加工の仕方によって、種類が変わってくると覚えておくといいかもしれない。勿論それぞれ専用の品種もあり、加工の良し悪しにより香りや風味も大きく異なってくる。

緑茶:摘み取った茶葉を加熱処理して発酵を妨げたもの

烏龍茶:発酵途中で加熱することで発酵を止めた半発酵茶

紅茶:摘み取った茶葉を乾燥させ、もみ込んで完全発酵させたもの

茶畑
茶畑
お茶の加工シーン
お茶の加工シーン

また、前提となる台湾の歴史を整理するとアヘン戦争(1840-1842)と、続くアロー戦争(1856-1860)で清国が敗れ、天津条約により作品の舞台となる淡水(台湾の地名)の港が欧米に開かれるのが1858年。トッドはこの新しく開かれた港に商機を見出して台湾にやってきた。その後日清戦争により日本に割譲されるのは1895年である。

豆知識を色々書き連ねたが、この作品はお茶や歴史の知識が無くても十分楽しめる作品となっている(勿論知識があれば、深い考察も楽しめるだろう)。主役となる二人、欧米人で無鉄砲ながら好奇心旺盛なトッドと、辮髪の漢民族で冷静沈着、知識豊富な春生のやりとりはいわゆるバディものとしても、二人の青年のサクセスストーリーとしても面白く読めるはずだ。ちなみに二人とも1838年生まれで1864年当時は24歳位である。この手の歴史物は案外、実際の年齢とかけ離れていたりする場合も多いのだが本当に若かったのだ。

実際のジョン・トッド
実際のジョン・トッド
実際の李春生
実際の李春生

ここまで読まれて教材的で堅苦しい作品だと思われた方もいるかもしれないが、そんなことは全くない。きちんとエンターテイメントしているので面白い漫画として仕上がっている。絵も癖のない日本漫画風で馴染みやすいだろう。

それにしても、こう言っては何だが、こんな地味な題材の歴史物が台湾で作られ、ちゃんと単行本として出版されているのは、地味に驚くべきことだと思う(しかも日本語に翻訳までされているとは!)。それだけアジアの漫画文化が成熟してきているということだろう。

現在、台湾の烏龍茶は高山茶などが有名だが、その下地を作ったのがトッドと春生なのだ。興味を持たれた方は、是非(ペットボトルでは無く)急須で烏龍茶を煎れて、彼らの足跡に思いを馳せてみては如何だろうか。

余談だが、台湾にはJohn Doddと言うティーブラインドもあるようなので、台湾に行かれた際は立ち寄ってみるのも良いかもしれない。(烏龍茶以外にも紅茶や緑茶も扱っている模様)。

レビュアー:ミソトミツエ

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