百年前の台湾へ、鉄道の旅。鉄道の魅力を思い出させてくれる『時空鐵道之旅(じくうてつどうのたび)』。

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時空鐵道之旅
作者:簡嘉誠
タイトル:時空鐵道之旅
制作:台湾
ジャンル:歴史/ファンタジー/タイムスリップ
ページ数:218ページ

優秀だが、人が良いためにここぞというところで一歩を踏み出せないサラリーマンの文鋒(ブンホウ)は、帰省のために久しぶりに列車に乗る。あまり良い思い出のない列車の旅に憂鬱な気分でいたが、偶然にも同じ会社に勤める女性・茵如(インジョ)と乗り合わせる。

ネガティブな列車あるある
ネガティブな列車あるある
茵如との再会
茵如との再会

二人は高校・大学・会社まで同じで、ほのかな好意を寄せ合う関係のようだ。ぎこちない空気の中、列車の旅が始まった。

 そんな中、文鋒は乗客の中に兎の耳を生やした少女を見つける。少女は突然、文鋒に車掌が列車を止めるよう頼むように言い、列車の事故を予知する。

列車で出会った不思議な少女
列車で出会った不思議な少女
列車で出会った不思議な少女
列車で出会った不思議な少女

少女の言葉は現実のものとなり、列車事故が起こると思われた瞬間、少女が謎の力を使い、少女の側にいた文鋒と茵如は不思議な空間に飛ばされてしまう。

異空間に飛ばされる二人
異空間に飛ばされる二人
少女の正体は未来人。兎耳も本物。
少女の正体は未来人。兎耳も本物。

少女の名前は司亞霧(しあ・きり)。未来からある目的のために時空旅行に来ている未来人だった。

霧の力で列車事故は回避され、一件落着と思いきや、三人の前に時空警察隊を名乗る人物が現れ、霧が時空跳躍法違反の罪に問われてしまう。

どうしても果さなければならない目的がある霧を助けるため、文鋒・茵如は霧と共に過去へと跳ぶことに。

鉄道を巡る三人のタイムトラベルはどうなるのか……!?

文鋒
文鋒
茵如
茵如
霧

台湾の鉄道を舞台にしたファンタジー。タイムトリップという一見万能に見える能力が登場するが、読み進めていくと能力の制限やルール(例えば、トリップした先の時代の通貨は無限に偽造できたりはせず、増やすには現地で働くしかない、など)もしっかり定められており、荒唐無稽にはなっていない。

三人は百年前の台湾を始めとした三つの時代を巡り、台湾の作品ということで、日本では馴染みがないと思われる車体が多数登場するが、一話ごとに、そこに登場した鉄道の解説ページが用意されており、作品をより深く楽しめるようになっている。鉄道が主軸に据えられてはいるが、時代背景もしっかりと描かれているので、娯楽作品として読めるだけでなく、台湾の歴史をかいつまんで学ぶこともできる。幅広い読者におすすめしたい作品である。

文鋒・茵如のもどかしい関係がどうなるか、未来人の少女・霧の目的が何なのかなど、キャラクターの魅力で読ませる部分もあるが、なんといっても優れているのは鉄道の描写である。

筆者は冒頭の文鋒と同じく、列車にはあまり良い印象がなく、積極的に乗りたいと思うタイプではないのだが、この作品に登場する鉄道には乗ってみたいと感じた。煙まみれの汽車の雑然とした雰囲気や、切り開かれたばかりの大地を走る爽快感。特に、表紙にも描かれている、青い車体のブルー莒光号(きょこうごう)は、車内の様子がいかにも快適そうに描かれているだけでなく、鉄道という外界から切り離された空間での人間模様を丁寧に描いており、鉄道の旅の魅力を思い出させられる。

歴史、SF、恋愛、鉄道と、様々な要素が詰まった『時空鐵道之旅』。ぜひ、文鋒たちと一緒に時空の旅に出て欲しい。

レビュアー:mayka

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