きんぎょ注意報発令! フランス人アニメ作家が描き出す美しき異世界ファンタジー―『ミロの世界 / 1 』

緑に囲まれた湖のほとりにたたずむ一軒の家。木製のテラスから伸びる長い桟橋に一人の少年が立っている。湖面は青い空を鏡の様に写し出しどこまでも静かだ。 少年はおもむろにサンダルを脱ぐと、ひと呼吸。そのまま桟橋の上を一気に駆け抜け、身を躍らせて湖の空に飛び込む。 次の瞬間ぐるんと天地が逆転し、少年が水面から顔を上げると!そこには見た事も無い奇妙な風景が広がっていた。 この1分あまりの短編アニメは1冊のマンガのトレーラーとして公開されました。制作したのは日本在住のアニメーター、クリストフ・フェレラ。 彼が原作のリシャール・マラザーノと共に書き上げたマンガ本編がこの『ミロの世界』です。 物語はこの湖畔の家に住む少年ミロが、湖で金色に輝く何かの卵を見つけて家に持ち帰ったところから始まります。 ミロの食事の面倒は三人のおばがみてくれているものの、父親は仕事が忙しく家には帰って来ません。いくばくかの寂しさを感じながら、ミロはリアル育成ゲームに没頭。 その成果があったか卵は拾った次の日には孵化。黄金に輝く見事な金魚が孵りますが、その明くる日には予想を超えた急成長!タライに収まりきれないほどの巨大魚になってしまうのでした。 ここまでのあらすじを読んで、スタジオジブリの2008年劇場公開作品『崖の上のポニョ』を思い起こされた方も多いでしょう。 ポニョではこの後、金魚がやや魚類系の顔をした可愛い女の子になって「そーすけ、好きぃー!」な展開になるのですが、ミロの場合は幾分用件が違いました。 この金魚を追って現れたのは、魚類系…というよりもむしろインスマス面(!)の不気味な怪人で、それが少年の家の周囲をうろつきだしたのです。 怪人はすでに謎の少女ヴァリアを袋詰めにしてさらっており、あまつさえ空腹まぎれに少女を食べようとしています。 そこにさらにもう一人の怪人まで加わって… 二人の怪人に追いつめられた少年は、金魚に導かれる様に湖のむこうへと船を漕ぎ出すのでした。 美しくも奇妙に閉じた世界だった少年の物語は後半から一変、異世界ファンタジーアドベンチャーへと飛躍します。 湖を襲う突然の大嵐、宙に浮かぶ黄金の魚、湖の向うの異界の人々、有機的なフォルムの建造物が立ち並ぶ村、その村を破壊しにやってくる巨大なウーパールーパー(メキシコサラマンダー)! さらには怪物たちを操る怪しげな魔術師や、三位一体で少年と少女を追うおばたちの存在も加わって、一匹の金魚から始まった物語はいよいよ謎を深めて行きます。 フランス語版では間もなく四巻目がリリースされる『ミロの世界』。全編にわたって展開される美しい背景美術と躍動感に溢れるキャラクターは、見るだけで楽しくなる魅力にあふれてます。 バンドデシネ(フランス語圏のマンガ)独特の読みにくさのない軽快な作品ですので、子供から大人まで全ての方にお勧めです。 レビュアー:うしおだきょうじ 作品紹介 無料試し読み